"shifting"

ビデオ スライド インスタレーション. time: endless
ミックスメディア: 映像、スライド、音 2006
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長い時間をかけ発展してきた私たち固有の伝統は、今日の消費社会で地域を代表する観光産業のステレオタイプの一つになっています。消費社会の変化が早く、様々な物が生み出され、そして消えていきます。その発展のキーワードは、「簡単」「便利」に思えます。


例えば、デジタルカメラです。ピクセレートされた画質はフィルムより劣っているのに対し、画質の良い本格的なアナログより簡単に確認/編集でき、現像の必要がなく、大量のフィルムを持ち運ばずに多くの写真が撮影可能で便利になっています。コンピュータは世界中に広がり、既に私たちの生活の一部となりました。


その伴い、デジタルカメラ、ビデオカメラといったデジタル機器が主流になり、アナログカメラ、スライド映写機といったアナログ製品は姿を消しつつあります。スライド映写機の最大の生産会社は、既に製品ラインを止めてしまいました。

「デジタル化」は将来的な発展に大きな意味を持っています。しかしながら「簡単」「便利」な発展は、本質的な目的と異なった方向に向かっています。カメラでの撮影において、高品質で美しいイメージという不可欠で本質的な発展にとどまらない、現代社会の多様化した存在意義を生み出しでいます。

 

都市開発においても、やはり同じ事が言えるでしょう。固有の風土に合わせ長い時間をかけ発展、改善されてきた伝統的な木造建築は徐々に消し去り、どんな気候にも耐えうる手のかからないコンクリートで作られ、気温、湿度までコントロールされた現代的な建築に姿を変えようとしています。


この作品 "shifting" では、西洋の都市の「ロンドン」をテーマに制作しています。ロンドンで撮影した短編映像は、今日のロンドンをテーマに、建築、バス、看板、ライト、臭い、音、カオスなどから制作しました。この短編映像はビデオプロジェクターを使用し、一方、アナログカメラで撮影した伝統的な都市環境をスライド映写機で投影します。また、スライド映写機の音は伝統的なイメージの効果音として使用します。

実験的なサンプリング・プロセスで収集した、現代、伝統の異なったイメージは、ビデオプロジェクターとスライド映写機を使い投影します。二つのプロジェクターは同じ場所に重なりあるように繰り返しプロジェクトします。ビデオプロジェクターで投影される短編映像、スライド映写機で映されるイメージは時間的な違いにより、決して同じ組み合わせになる事はなく、分離されてた多様な要素を、再結合し新たな視覚的効果を作り出します。この展示法により、偶然にできた二つのイメージの組み合わせが複雑な意味を創り出します。


この相互作用により様々な異なったイメージを生み出されます。私たちが生活する現代社会で見え隠れする伝統文化、またそれらが共存していく方法はないか考えて頂く機会になれば嬉しく思います。